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発達障害が気になったら

はじめに

発達障害を考えるにあたり

「発達障害」最近よく聞く言葉です。私たちのクリニックが始まった頃には、子どもに対して使う言葉でした。時には「発達」だね。という言葉さえ聞くことがあります。なにか差別的な言葉にとっている人たちもいます。なんだかよく分からないうちに言葉だけが一人歩きしている気がすることもあります。
最近では子どもだけではなく、「大人の発達障害」もマスコミで取り上げられることが多くなり、このような大人向けの本がベストセラーになっています。社会で起こっていることすべてを発達障害で説明しようとする動きもあり、女性の悩みにも、職場や夫婦関係の悩みについても関係するキーワードとして使われるようになっています。私たちのクリニックは、子どものためのクリニックとして発足し、子どもを取り巻く環境としての家族、とくに夫婦関係に注目した試みも行ってきました。子どもの頃から診ている小さな不揃いのどんぐりが、思春期を迎えて大学生に、そして社会に巣立って行き、大きな立派なオークの木になるまでサポートしなければいけないと思っています。

発達障害は、子どもが発達していく過程のどこかに(出生前あるいは幼児期、学童期に)問題が生じてくることを指しています。 さらに、精神病的な症状ではなく、認知(理解、行動する過程)に問題があり、生活・学習上に問題を生じている状態と考えればわかりやすいと思います。発達障害を考えていくためには、こころの発達に及ぼす様々な要因を理解することからはじめなくてはいけないと思っています。

I、子どものこころの発達に及ぼす4つの要因

子どもの精神や行動に問題が発生するのには4つの要因が考えられます。

1. 子どもが元来もっている素質

生まれながらにもっている、遺伝子、出生前環境による素質・・・発達障害など

2. 発育環境

両親との関わりなど、生後の発育環境(極端な例は虐待、ネグレクト)

3. 社会との関係

学校、地域など、集団生活での社会との関係

4. 偶然起こる出来事や出会い

社会的成熟とトラウマ

発達障害は、健常な発達段階の重要な要素が遅れて、アンバランスに発達していく、認知の障害と考えられています。我が国で使われている「発達障害」は国際的にはてんかんや脳性麻痺、知的障害など器質的な神経疾患について使われていました。そののち、国際的な「発達障害」という用語が拡張され、「軽度発達障害」という言い方で現在使われている「発達障害」にかわりました。我が国独特の使い方でしたが、国際的にも同様の動きがあり、アメリカ精神医学協会のDSM-5(精神障害の統計・診断マニュアル)では、「神経発達障害」とされるようになりました。

II、子どもの発達の段階

子どもの発達の段階に注目

発達障害を理解するためには、まず子どもがどのように発達していくか、大人になるまでの間に必要な「発達の段階」を知ることが大切です。この段階のどこかがうまくクリアできていない場合が発達障害と考えられる子どもたちです。多くの方は、発達障害と聞くと「病気」というマイナスの面でとらえてしまいがちですが、大きな違いは、病気は治療という過程で良くなりますが、発達障害の子どもは発達していくことで症状も改善していきます。大切な時期と発達課題について考えていきましょう。

≪1歳頃≫

1歳頃最も重要な発達課題は「愛着」です。
人に対しての基本的な信頼感が育っていくこの頃の子どもは、基本的に母親から離れず、くっついて過ごします。それにより安心し、保護者との間に特別な絆が形成されるのです。母親がいつも自分を見守ってくれる対象と認識し、どんな苦しいことがあっても、母親がいるから生きていけるという絶対的な安心感を持つことを「愛着」といいます。愛着の目標は、思春期以降に独立して生きていくだけの基盤を持てることです。一般的に1歳頃までに「愛着」が形成される準備が整います。発達障害のある子どもは、生まれながらにもつ本人の資質などが原因となり、この年齢が遅れる傾向があります。 例えば、アスペルガー症候群では、3~4歳頃にこの時期がくるといわれています。

≪1~1歳半頃≫

人の視線の方向に気付き、相手と同じものに注意を向けるようになります。(共同注視)すなわち、2人が肩を並べて1つの対象を眺めることです。同じ物を見て、同じようなことを感じていると思うことで、2人の間に特別な関係が生じます。この認識が2人の愛情につながるのです。恋人同士が映画を見に行き、同じ場面で笑い合い、愛情が深まることと同じです。 自閉症の子ども達は人の視線に気づくのが遅れることから共同注視も遅れます。 自閉症の子ども達は、10歳頃から人の視線に気づくようになり、このような姿勢でコミュニケーションをとることで、安心してコミュニケーションをとることができるようになります。見つめ合いの緊張から逃れて、同じものを見て、笑い合ったりすることで「共感」が生まれるのです。

≪1歳半から2歳頃≫

愛着形成がうまくできた子どもは、お母さんから少し離れていきますが、すぐに不安になって後ろを振り返ります。そのような時にお母さんが見守っていれば、愛情を確認できます。この「再接近期」の発達段階を経て、自分は愛されていると確信し、離れて一人でいることができるようになります。愛着の確認ができていない場合、いつも人の愛情を疑ったり、愛情を確認するための行動(試し行動)をとってしまったりします。このことが、思春期や成人期になってからの自殺未遂や自傷行為、薬物中毒(人格障害)につながると考えられています。
1歳過ぎの発達で大切な課題として「社会的参照」があります。社会的に「良いこと」「悪いこと」を他者に問い合わせることをいいます。子どもが何かを行動しようとする時には、お母さんを見て「これをしても、大丈夫?」といった顔をします。その時にお母さんが、「大丈夫だよ」「駄目だよ」というふうなサインを出してあげることで、社会にとっての「良いこと」「悪いこと」を学んでいきます。お店に欲しいものが並んでいたとしても、まず盗もうとしません。盗もうとすると、何か妙な感じがするからやめるという、原始的な判断がはたらいているからです。間違ったことをすると変な感じがするという感覚の原点が、この社会的参照です。 この社会的参照が育たなければ、後々、犯罪などの反社会的な行為をしてしまう原因にもなるかもしれません。

≪2歳頃≫

外界に向いていた目が自分自身に向くことが「自我」の始まりです。この時期になると、自分自身の存在を意識できるようになり、それまで外界に向いていた目が自分に向かいます。その頃から、自分がどんな人かを考える様になり、このことを「自己意識(自我)」といいます。 一般的に2歳頃に「自我」が形成される準備がととのいます。自我が育たないと、自分自身を大事にしなくなってしまいます。不安定な自分であれば、社会にどのように関わっていくか、どのように協調していけばいいのかを考えることができなくなってしまいます。こうした場合に親ができるのは、「子どもの意図を大切にする」ことです。
自我の芽生えとは、子どもが他者の意図と自己の意図を統合して自己の意志を形成していくことです。親の意図だけを押しつけないで、子どもの意図を大切にしてあげることが大切です。

≪3歳頃≫

この時期になると、自我が強くなり自分の要求を通そうとし、親の言うことを聞かなくなります。周囲を見ていないので状況とかけ離れた要求をすることもあります。ASDの子どもは、周囲に気づく、愛着行動が出現する、周囲の状況が分からず自己の要求を通そうとするなどの時期でもあり、子どもの発達レベルにより状況は異なっています。この時期は自我の始まりでもあり、社会の一員としての準備期間であるとも考えられます。この時期は子どもと親のバトルの時期かもしれません。社会的状況を考えて我慢させたい親と自分の要求を通したい子どもの戦いの時期でもあるのです。今がつらいから妥協するのではなく、将来を考えて我慢させるようにしてください。母親が最もつらい時期でもありますが、父親が最も必要になる時期は、次に控えていますので、父親は「父の役割」ではなく、「夫の役割」を果たしましょう。子どもの世話、家事の手伝いなども必要ですが、夫が妻の気持ちにより添ってあげて共感してあげることが最も重要です。

≪4歳頃≫

子どもは3歳頃になると1人でどこへでも移動できるようになりますが、自由に動きまわりたいと思っても、親は危険を回避するために子どもの行動を制限しなくてはならない時もあります。このような親子間の衝突を「反抗期」といいますが、子どもの反抗は、自分の感情をコントロールする自律機能が発達することによっておさえられます。自律がしっかり育った子どもは、その後の生活の中で適切な行動をとることができるようになります。自律機能を適切に形成していくためには、父親の役割が重要になりますが、母子の愛着関係がきちんと形成されていなければなりません。子どもが、何があっても自信を持って生きていくことができる基盤となる気持ちだからです。何があっても守ってくれる、見守っていてくれる、そんな気持ちでしょうか。この気持ちは、何事も許してくれるのでは、という気持ちにまだつながっている時期ですので、この時期は、父親が父としての役割を問われる時期であるのです。
こうした場合に親ができるサポートは、「我慢の大切さを教える」ことです。良いこと、悪いことは、周囲の状況、社会的規範から決まります。 周囲の状況をわかりやすく説明し、我慢することの大切さ、我慢をすることで報われることを教えてあげましょう。
父の役割は、「くそばばあ」という言葉が使われるようになる思春期に最も必要とされますが、父の役割は「社会的規範」としての存在なのかもしれません。

4歳以上になっても、自律(社会に適切な行動をとること)が育っていないことがADHD(注意欠如・多動性障害)の一側面であるといわれていますが、4歳頃までは、抑制機能の一時的な遅れなのか分からないために、ADHDの診断はできないということになります。

≪5歳頃≫

健常であればこのころまでには、相手の立場や相手の気持ちを理解することができるようになります。人はその人の持つ考えと気持ちで行動していることを理解できるということです。このことを、「こころの理論(TOM)」といいます。ボールを隠されたことを知らないサリーは、アンがボールと隠したことを知らないので空っぽの籠を捜してしまう。(サリーとアンの課題)相手のもらったチョコレート(米国のマーブルチョコレート)に色鉛筆が入れられているのを知っていても、相手が知っていなければチョコレートをもらったと思って喜んでしまう。(スマーティーの課題)これらは、この頃通過しますが、前者は視覚的に考えればわかり、後者は言語的思考が必要になるため、ASDでは前者が早く通過します。

≪6歳頃≫

この頃には、子どもの心にものを「学びたい」という欲求が芽生えだし、「集中する」、「座っている」、「覚える」、「書く」、「計算する」、などといった勉強に必要な能力が発達していきます。一般的に6歳頃に「勉強に必要な能力(学習レディネス)」が形成されます。6歳を過ぎても、学習に必要な能力が育っていないと、LD(学習障害)やADHD(注意欠如・多動性障害)につながる恐れがあります。上記であげた能力を見極め、育てるサポートをしていく必要があります。サポートは、保育園や幼稚園の環境から急に学校の環境に飛び込むようにするのではなく、「学校の様子を予習する」ことであり、家の中でも生活環境を規則的にして、学校で行われる様子を予習してみます。学習する姿勢、話すこと聞くこと、書くこと、計算することなどを日常生活のなかに取り入れ、遊びの一環として行っていきましょう。 お使い、遊び、食事、散歩、入浴など、学習の準備を整える機会は日常の中にいくらでもあります。この頃は沢山褒めてあげましょう。素直なこころの時期でもあり、褒められることでがんばるこころが育っていきます。

≪10歳頃≫

7~9歳頃までは学校生活にも慣れ、最も落ち着いた時期であるといわれています。この時期にストレスがあると爪かみ、抜毛、チックなどが出現する時期でもあります。このころには、自分がどういう人(理想像が必要ですが最近は身近に理想像が存在しないことが多いようです)になりたいかを考えはじめ、同時に自分を大事にする心や、自分に対しての自信や誇りが芽生え始めます。小学校低学年の親から褒められることに喜びを感じていた時期は過ぎて、「みんなの前で先生から褒めてもらった」といった経験や自尊心が欠如すると、社会生活を送るために大切なセルフコントロールを失ったり、依存症や摂食障害などの精神障害につながったりします。 特に発達障害やうつ病ではこの自尊心が育っていない、欠如していることが多いといえます。親が出来るサポートは、「当たり前でも褒める」ことです。すごいから褒めるのではなく、出来て当たり前と思うことが行われた時にもほめることが大切です。このような対応から挑戦する心が生まれます。良くないことは叱るよりも、無視しましょう。算数、国語、歌、体育、手伝い、掃除など褒める機会はいくらでもあります。悪いことばかりに注目するのではなく、常に子どもの良いことを言えるようになりましょう。

≪思春期≫

思春期は11~18歳頃まで続く、第二次性徴をきっかけとして始まる心身ともに不安定な時期のことを指します。急速な身体面の発達・成熟が特徴的で、性的機能の成熟(第二次性徴の発現)と自律神経・内分泌機能の急激な発達に伴う心身の不安定さや情動の不安定さのある、身体的にも精神的にも不安定な時期です。
異性に対する関心の目覚めが始まり、自意識の発達(内省的、内面化、秘密保持)も著しいために、心理的な緊張の動揺があり、過剰なはにかみと自己顕示欲などが入り混じる時期でもあります。自分を意識するようになり、他者の目、評価を気にする、社会的には、心理的離乳の時期でもあります。同時に、両親や家族との結びつきが弱くなり、学校をはじめとする仲間との結びつきが次第に広く深くなり、自主的な傾向が強まります。(第二反抗期)このような不安定な時期は、どの子どもにも存在しますが、基盤としての愛着の存在、社会的基盤、内省の積み重ねの発展としての自我形成が十分に育っていない発達障害の子供達にとっては、親から独立しなければいけなくなっていても、友人や社会的なサポートを得られていることも少ないために、孤立した、不安な思春期を過ごさなければならないことになります。彼らをサポートできるようなサポーターを、この時期までに確保しておくことが重要です。学校や社会のつながりは断片的になってしまいます。こころを分かってくれる医療スタッフとの長いつきあいも重要かもしれません。

III、発達障害の基礎知識

発達障害は、脳機能(認知)の障害です。親の育て方やしつけが原因でもなく、精神疾患でもありません。見聞きしたものを理解し、記憶する、過去の経験に照らして、計画を立てて行うといった、脳のさまざまな機能のことを「認知機能」と呼びます。発達障害がある子どもの脳にはこの認知機能に、かたよりがあることがわかっています。

発達障害とは自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これらに類する脳機能の障害であり、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものです。(発達障害者支援法 2005)  我が国独特の概念でしたが、近年、発達障害は、精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)における、様々な神経発達症(Neurodevelopmental disorder)として同じカテゴリーにまとめられようになりました。

認知機能に障害が起こる主な原因

1. 遺伝的素因

脳機能の障害は、もって生まれた遺伝的な素因が大きく関係しています。

2. 環境要因

いじめ、虐待など人間関係で生じるストレスが脳の働きに影響することもあります。

発達障害の3つのグループ

発達障害は大きく3つのグループに分類されます。

①ADHD(注意欠如・多動性障害)

小児期から思春期での精神疾患で最も頻度の高い疾患は、ADHDです。米国では、疫学的には10%といわれており、非治療の小児では80%が思春期になっても症状が残存するといわれています。これらの症状は、少なくなりながらも成人期まで存在します。予後は、各年代での発達課題をどのように乗り越えることができたか、どのような併存障害、合併症があるかによるといわれています。

≪診断基準(DSM-5)≫

不注意、多動性/衝動性の持続的な症状の所見として、各症状が6ヵ月以上にわたって持続していること、小児の場合、不注意症状、多動性/衝動性のそれぞれで6つ以上の症状を認め、思春期および青年(17歳以上)については5つ以上の症状を認めるといわれています。不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかが、12歳以前に存在し、これらの症状のいくつかが2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している(DSM5)ことが必要です。これらの症状が社会的・学業的・職業的機能を損なわせている、またはその質を低下させているという明確な証拠があり、症状が統合失調症や他の精神障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないといわれています。

≪日常生活の特徴≫

多動性、衝動性、不注意で落ち着きなく、同じペースを維持することができず、ほかの子どもにちょっかいを出し、切り替えが悪く、的外れの突然発言、居眠り、聞き取りが悪く、適切に注意を払うことができない、不注意で忘れやすい子どもたちです。不器用、頻尿、電話番号が覚えられない、道を間違う、時間が守れない、会話がぎこちない、無意味なこだわりなども特徴です。

≪治療≫

治療は行動療法の基づいた日常生活の指導、ペアレントトレーニング、WMトレーニング(ジャングルメモリー)、薬物療法、サプリメント(オメガ3,フォスファチジル・セリン)があります。合併する不器用などについては作業療法士による感覚統合訓練、視覚認知トレーニングなど、言語聴覚士によるコミュニケーション・言語訓練など、漢字訓練、学習支援などがあります。

② ASD(自閉症スペクトラム障害)

自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)とは、DSM-IV-TRにおける自閉性障害(Autism)、アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、小児期崩壊性障害(CDD)などの各疾患をいいます。DSM-5においてはASDを用いて再定義されました。そのため、ICD-10で用いられている広汎性発達障害(PDD)などの分類体系などとは一致していません。DSM-11では同じ分類名が用いられるようです。ASDの診断基準は「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」の2つを満たすとDSM-5では定められています。典型的には生後2年以内に明らかになるとされ、3歳までに症状がそろいます。有病率は0.65〜1%とされ、性差は男児において女児よりも4倍とされ、45〜60%は知的障害を、11〜39%はてんかんを併発しています。原因については現時点では脳機能の変異とされています。治療のゴールは、中核症状および関連症状を最小化し、さらに患者のQOL(生活の質)を最大化し患者家族のストレスを軽減することに置かれています。

≪日常生活の特徴≫

決まった順序でやらないと気がすまない、自分の好きな同じ話題・活動ばかりをする、1つのことに熱中するので、同時に2つのことができない、音や触られることに敏感、目があっても視線をそらす、物事の重要性が区別できない、他人に関わろうとせず、集団でで遊んだり、ルールを守って遊ぶのが上手くできない、他人の存在を忘れ、耳が聞こえないように見える、癖やチックのように同じ手の格好や動作を繰り返す、動いたり回転するものに強い興味をもつなどの特徴があります。

《治療》

ゴールは、中核症状および関連症状を最小化し自閉症らしさを最小化して、他の人と同じような反応をしてわからなくすることです。ただ、応用や概念化などの柔軟性が乏しいために、なにか変だという思いをもたれることになりますが、「こんな人もいるよね」と思われるようになることが目標です。
基盤として、時間と場所と順番を視覚化してわかりやすくし、同じパターンで日常生活を過ごしていく(構造化)こと、予定の変更などはあらかじめ説明するか、理由を明らかにして納得させる、などがあります。
極端な偏食と便秘で睡眠障害であることが多く、栄養が偏り、脳内の神経伝達物質のアンバランスな状態を招くことから、サプリメントの使用からまずはじめます。(総合的ビタミンとミネラル特にマグネシウム、B6、B12、乳酸菌製剤)などを用います。合併する二次的な症状により、睡眠調整剤、感情安定剤、向精神薬などを使うこともあります。原始反射が残っていることも多いために、乳児期から感覚統合療法を中心に作業療法を行います。同じ姿勢で同じ筋群しか使わないため、青年期以降には拘縮や運動が適切に行われることができなくなることもあるため、メンテナンスとしての運動療法は欠かせません。対人関係、コミュニケーション。奇妙な言語表現などは言語聴覚士が関わることにより改善していきます。

③学習障害

学習障害(Learning Disability, LD)は、単一の障害ではなく、さまざまな状態が含まれ、医学、心理学、教育学の分野にまたがって研究が進められ、それぞれで若干概念が異なっている。バランス感覚を欠き、身体の協調運動の困難を合わせ持つ子も多いため、リハビリテーション医学の分野でも研究が行われています。読解(ディスレクシア)、数学(ディスカルキュリア)、書き取り(ディスグラフィア)などがあり、我が国では文科省が1999年に「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」と定義しています。
ICD-10では、学力の特異的発達障害(Specific developmental disorders of scholastic skills)と呼び、特異的読字障害、特異的書字障害、算数能力の特異的障害、学習能力の混合性障害、その他の学習能力発達障害、学習能力発達障害詳細不明 に細分されています。DSM5では、限局性学習症/限局性学習障害(SLD、Specific learning disorder)とされ、DSM-IV-TRで細分していた障害は、包括され重なる病態(スペクトラム)として再定義された限局性学習障害の1形態となり、読み・書き・計算という領域を示す識別語を付加して示されるものとなり、重症度を軽度・中度・重度の3段階に評価するようになっています。

《治療》

ADHD、ASDに合併する場合には、それらの治療をまず行います。まず知的能力に比べて学習能力が特定の分野でのみ習得と使用に著しい困難を示す様々な状態であることを証明しなければなりません。我が国における各分野の標準値が最近になり提供されるようになったため、疑われる各分野のスクリーニングと追加の心理・言語学的検査を行い、学習障害をひきおこしている明らかな認知過程を同定します。どの過程に問題があるかを同定することにより、医師、作業療法士、言語聴覚士、心理士、学習支援の各分野が協力して治療に当たることになります。

ギフテッド(2E) 診断名ではないが、特定の特徴をもったグループ

私たちは、発達障害とは認知の偏りであり、才能の偏りであると最初から考えてきました。(発達障害をもっと知る本、天才と発達障害)天才は偏りのある人でなければなり得ないと考えています。私たちのクリニックは、高い知能を持ちながら、学校に適応できない就学前から小学校低学年の子供達を診察してきました。他のクリニックでは、「知的に高くてよかったですね。頑張ってください。」といわれていた子どもたちですが、知的に高くても不適応を起こしている子ども達と付きあううちに共通点があることに気づいてきました。衝動的で、時には暴力的、思い通りにならないと大声で叫んでしまう、忘れものをしたり、なくしたりと日常生活上では多くの障害があります。学校の勉強はあまりにも簡単すぎてつまらない、運動は不得意なことが多く、自分中心の発想をして他の人の気持ちや立場を考えることできないことから、友達はできないことが多いようです。これでは不適応になってしまいます。このような子供達と話をしていると彼らの純粋さと興味のあることに対する情熱には感心させられます。彼らとしっかり向き合っていくうちに、次第に落ち着いて自信を回復していきました。時にはADHDの治療が必要なことがありました。同じような子供達を集めて一緒に遊ばせたこともありました。子どもっぽく遊ぶ彼らを見ているうちにほのぼのとした気持ちになりました。そのうちに小学校高学年の子供達にも同じような子供達がいるのですが、なぜか何となく寂しそうで自信をなくしてきていることに気づき、中学校、高等学校になると学校に不適応になり不登校に、社会に不適応になり、引きこもりになっていくことに気づきました。このようになっている子供達が小学校低学年の元気のギフテッドとしてみている子供達と同じだということに気づくようになりました。こうして私たちのクリニックでは、ギフテッドでありながら発達障害の要素を持つ子供達に対する試みが始まりました。2重の例外を持つ子供達がこれからの我が国の発展に寄与できるように育てていけたらと思いながら日々臨床をしています。

私たちのクリニックでは、すべての専門家が今まで述べてきた子供達のために、毎日新しい発見をしながら次の子供達のために役立つ方法を模索しています。きっと10年後には今とは違った方法で治療を、療育を行っていると思います。少しずつ違った不揃いのどんぐりがすばらしいオークの森を作るようになるまでは。